一秀くんの同級生のブログ

hirarin601.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

かずちゃんの家

 かずちゃんの家には一度だけ、誕生日に招かれて行ったことがある。
 私たちが小学校1、2年の頃のことだから、昭和42、3年のことである。クラスの友達何人かを家に招いてお誕生パーティーをしていたが、たぶん私が自分の誕生日に彼を招いたので、そのお礼に誘ってくれたのだと思う。

 彼の家は庭付き一戸建てで、新しくてきれいだった。庭には花壇があり、犬を飼っていた。当時借家住まいをしていた自分の家と比べると、とても素敵な家に見えた。
 ごちそうに何が出たのか記憶が定かでないが、プリン・アラモードのようなデザートが、ひとり分ずつ器に盛られて出たのは覚えている。こんなハイカラなデザートを、お母さんが作っているのかとびっくりした。
 いつもかずちゃんと一緒に遊んでいる男の子が、スタスタと二階の子供部屋へ入って行ったので、その子の後から付いて行き、かずちゃんの勉強部屋を少しだけ見ることができた。私が家で自分の机を持てたのは高学年になってからだったので、彼が自分専用の学習机を持っていたのに驚いた。今なら普通なのかもしれないが、すごい機能のついた机に見えた。顕微鏡や望遠鏡もあり、教育熱心なご家庭だったことが伺われる。

 かずちゃんのお父さんが、玄関で私達を慈しむような、仏さまのような笑顔で出迎えてくれたのを覚えている。お母さんのよく響く明るい笑い声も、断片的ではあるが印象深く記憶している。
 今それらの記憶をたどると、ご両親に愛されていた彼の姿が浮き彫りになる。底抜けの明るさ、人への優しさ、聡明さ、積極性などの、私が初めて出会って瞠目した彼の数々の美徳は、この堅実な温かいご家庭で育てられたのだと思う。

 その彼が、このご両親を裏切ってまで、二度もの愚考を重ねたとは、どうしても思えない。
 彼はいつも爽やかで、正々堂々としていた。
 その彼が、卑劣で稚拙な犯行を繰り返したというのが、どうしても腑に落ちない。
 私にとっては、ライオンがバナナを食べたとか、松の木に林檎がなったと聞いたのと同じ、奇妙なありえない話だ。
by hirarin-601 | 2006-10-02 13:21 | 少年時代の植草さん