一秀くんの同級生のブログ

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「お父さんはやってない」の谷田部夫妻

 5月9日水曜日の朝日放送「ワイド!スクランブル」で、山本晋也監督が矢田部夫妻をインタビューした。
 “矢田部夫妻”とは、周防監督に「それでもボクはやってない」を作らせる元となった痴漢冤罪裁判を闘い、一審で敗れるも控訴審で無罪を勝ち取ったご夫婦であることをご存知の方も多いと思う。
 『お父さんはやってない』(太田出版)という本も出ている。逮捕から高裁判決までの2年にわたる苦しみに満ちた日々が、夫・妻、それぞれの立場から描かれている。

 通勤電車を降りてホームを歩いているときに女性に呼び止められ「こいつ、痴漢」と言われた瞬間が、地獄の日々の始まりだったという。
 痴漢冤罪の被害者は、「話せばわかる」という穏やかな気性で、品行方正な人が多いように思う。矢田部さんも、「お前、ズボンのチャックをおろして、キンタマ握らせたんだってな!」と警官に言われて「なんなの、それ?」と面食らってしまったそうだ。
 矢田部さんが当日着用していたズボンにチャックはなく、女性との身長差を考えると不自然に屈まなくてはその行為ができないことはすぐにわかる。それでも警官は、取り調べで矢田部さんを犯人と決め付け、机をバンバン叩いた。それはまるでテレビで見るシーンとそっくりなので、最初は冗談かと思って笑いそうになったと矢田部さんは語る。本人は「やってない」と言ってるのに、「私は電車内で陰部を露出し・・・」と警官が勝手に調書を作文しようとしたのだそうだ。
 こういう話をいたる所で聞くと、
「調書は警官の作文であり、時として捏造が行われる」というのは、
「警官が捜査もせずに痴漢の被疑者を犯人と決め付ける」ことと合わせて、もはや既成事実である。このことを声高にして世に広めたい。

 矢田部夫人は理路整然と話をされる方で、ご主人の無実を微塵も疑わず、常に冷静に対処するような、ご主人にとってはとても頼りがいのあるパートナーに見受けられた。そんな方でも、夫が職を失って精神的におかしくなると、だんだん支えきれなくなり、あわや一家心中未遂というところまで追いつめられたのだそうだ。
 冤罪被害者で自殺を企てた人は、私が知るだけでも、植草氏以外の痴漢冤罪被害者の方々や、鹿児島事件の冤罪被害者の方々がいる。植草氏の自殺未遂について、「逮捕されたのが恥ずかしくなったからだ」と言う人がいた。それは権力に追いつめられた人間の心理を知らない人の言葉だろう。そもそも「恥」の感覚を持った人なら痴漢などしないはずだ。「痴漢」という恥知らずな行為をする一方で、逮捕されたことを恥じて死のうとするような矛盾する性格を併せ持つ人間が実在するのか疑わしい。もしもいたなら実例をあげて欲しいものだ。

 痴漢裁判の有罪率は99.86%だと、この番組でも伝えていた。小数点第二位の数値を四捨五入すると、なんと99.9%となる。
 パ・リーグの「楽天」がいくら弱くても、1000試合やって999試合負けるなんてことはありえない。もしもそうだとしたら、そんな試合をさせること自体が無意味であり、前提となる条件が不公平だと見るべきである。同じ土俵で戦っているとはとても言えまい。大相撲で強いと言われる横綱であっても、長期間にわたって一人勝ちを続ければ、八百長との疑惑が持たれる。
 イギリスでは無罪を争う裁判、つまり被疑者が容疑を否認している裁判での有罪率は50%程度だそうだ。否認の場合でも、日本の裁判の有罪率は97%と異常に高い。高い有罪率の裏には、捜査機関の逮捕・起訴に対する慎重な姿勢があるとされているが、これも最近相次いで明らかになってきた警察による自白強要を見れば、有名無実化していることがわかる。
 英米法では一審で無罪になったら、検察は上訴することができないルールなのだそうだ。このルールだったならば、「名張毒ぶどう酒事件」も、一審で無罪が確定しているはずだった。ところが日本の刑事裁判では、一審で無罪判決が出ても必ず検察官が控訴し、控訴審ではかなりの高い確率で逆転有罪判決が出て、最高裁上告はなかなか認められずに、有罪判決が確定することが多いのが実情だそうだ。同じ罪状で何回も裁かれる被告人への、精神的配慮が全くない。権力側にあまりにも有利なルールではないか。
 余談になるが、鈴木宗男・衆院議員が11日、衆院法務委員会で質問に立った。鹿児島事件で被告が「自白」を強要されたことを取り上げ、強引な捜査を防ぐために取り調べの模様を録画・録音するよう求めたそうである。 鈴木氏にエールを送りたい。

 インタビューの最後に、矢田部さんは、「裁判所は公正な判決を、冤罪で苦しんでいる人に下してくれることを祈るのみです。」と語り、夫人は「(痴漢冤罪とは)他人事ではなく、自分の家族が巻き込まれるかもしれない、身近なことだと思います。世の中がどういうしくみで動いているのか、普通の人たちも関心を持ってほしいなと思います。」と締めくくった。
 「もし、あなたが?あなたの家族が?」というテロップが出て、画面はニューススタジオに戻った。

山本監督 「僕らは、法廷で公正な・公平な裁判を受けられると思って安心してますよね。でも有罪率99.86%の痴漢裁判なんです。痴漢という行為に対する偏見のようなものが司法関係者にあるのかも知れないです。」
大下アナ 「私もお伝えするときに、容疑者というだけで自分も色眼鏡で見て伝えているようなところもあるような気がして、『疑わしきは被告人の利益に』というか『まだわからない』という目を持たなければいけないなあと思いました。」
 (マスメディアによる「犯人視報道」に気付いてくれてありがとう!)
山本 「今おっしゃった『疑わしきは被告人の利益に』って言うでしょ、でも痴漢裁判に関しては『疑わしきはクロ』なんです。」
一同 「(溜息)」
大下 「そこが大原則に反している…。」
山本 「それとですね、電車の中で手を挙げてつり革につかまってりゃいいとか、いろんなこと言いますけど、降りた時に女性が『あなた痴漢よ。駅員さんちょっと来て』と言われたら、その時が逮捕なんです。」
大下 「現行犯逮捕ですね。」
山本 「警察官に逮捕されるのじゃなく、『あなた痴漢したでしょ』と女性が言った瞬間が現行犯逮捕なんです。」
山本 「疑わしきはクロですからねえ。女性に言われたらその場で逮捕ですから防ぎようがないんです。」

 控訴審で無罪が確定した矢田部夫妻は、元の生活を取り戻したように見えた。一度辞めた会社にも戻ることができた。しかし、苦しみに満ちた2年間は戻ってこない。拘束されていた期間、失業していた期間の失われた収入に対する刑事補償はたったの115万円だったそうだ。かたや、裁判にかかる弁護士費用が600万円。無罪になったからといって、国が支払ってくれるわけではない。
 それでも谷田部夫妻は運の良いほうだ。
 無罪を勝ち取っても、元の生活を取り戻せない人もいるし、有罪判決を受けて人生を狂わされてしまった人が何百人もいるのだ。「ワイド!スクランブル」には引き続き、このような方々を是非取材していただきたい。

 無罪を訴え、裁判に負け、職場を、家庭を、人生を奪われた人の手記を最後に紹介しておく。
 
  「痴漢えん罪被害者ネットワーク」のサイトより
            「山手線事件」
by hirarin-601 | 2007-05-14 03:59 | 痴漢冤罪